オイラ的充実読書ログ。

人生を充実させるために、本を読みます。

筒井康隆の小説感想7冊目 『アフリカの爆弾』

 

 

『台所にいたスパイ』(1966)

町内みんなスパイで殺し合いする話。

スパイ同士で殺し合うのは「平和のためだ」と、主人公は答えるが、このセリフに本意の何パーセントが入ってるんだろうか。

「平和の使徒スパイ万歳」

 

『脱出』

テレビドラマの世界と現実が融合していく世界。

タレントであるミッキー吉川の身に、私生活でもそのテレビドラマで演じているスパイ役のようなことが起きる。

一昔前は、テレビで見たことと現実とを区別している人が今より少なかったのだろうなあ。いい風刺。

 

 

『露出症文明』

テレビ電話買いに行ったら役所のヤツがいやな奴だった話。

非常にコント寄りですね。役所の男がなかなかテレビ電話を契約させようとしない。

お役所仕事への風刺かなあ。

 

『メンズマガジン1977』

雑誌の締め切りに何とか間に合わせようと四苦八苦する話。

終始ドタバタ。女性に対する敵意がベースにあり。「バンボーレ」と毒液を発射する。

ギャグマンガ調で、けっしてためになることはないことを感じるオチ。

 

『月へ飛ぶ思い』

宇宙に行くと死ぬかもしれないから、ツケを払ってくれとあちこちで言われる話。

明日宇宙へ飛び立つ飛行士。行くところ行くところで借金の催促をされたり、妊娠させた責任をとらされようとしたりして、自暴自棄になり、ついには寝過ごして月に行けなくなってしまった。

日本人の大衆の意見は「スーパーコンピュータが二位でいい」のだろう。

 

 

『活性アポロイド』

握っているとうっとりと快感を得られるボールが、麻薬が広がるように世にはびこる話。

麻薬のシンジゲートの出来上がり方をなぞっていてるが筒井的コミカルさが光る。

 

 

『東京諜報地図』

スパイものにかこつけたドタバタ。目的などはない。

「手をあげろ」のくだりは今の時代でも使われているコント。

 

 

『ヒストレヴィラからの脱出』

地球に帰りたい男がどのような行動を起こしても帰れない、悪夢的な話。

みんなのんびりしている中、一人この星から抜け出したい。この緩急がいい。

脱出できないことへの期待をしながら読む。

 

 

環状線

恋人との結婚のために、山手線を使ってその恋人を増やす話。

最後間違って三人に増えた恋人のために、自分を増やすっていうのが好き。

 

 

『窓の外の戦争』

家の中のこと、自分の身の回りのことと、外のこと、社会がかけ離れて交わることなく進行していく。とくに話の筋はない。

窓の外は他人事。現実でもゆるやかに人類は滅びる方向へ向かっている気もする。

 

『寒い星から帰ってこないスパイ』

自分をスパイだと思い込みスパイ先の星に行ってさんざんドジをやってつかまってしまう話。

仕事をする能力はあるのに、幼稚な思い込みでスパイ的な行動をするが、全然それが適っていない。心は子どものまま社会で活動しているみたいな人間。

こういう強い思い込みはストーカーに通ずるところがある。自分は自分の思った通りにならないはずがない、という自己愛的な考え方だろう。

周りにいると大変な人間の具現化をしてもらった。

 

 

『アフリカの爆弾』

アフリカの部落が国家として独立し、それぞれが核爆弾を持つ時代。ある部落が核爆弾を買いに行くのを、駐在している日本のサラリーマンがついていってドタバタする話。

どこの国も核爆弾を持つことへの風刺だろうが、全体的にギャグが冴えているタイプの話だ。

途中に出てくる村一番も美人の夫がいつまでも踊ってる姿や、ライオンが爆弾の上で寝そべったりしてるのを「ハミガキ野郎め」と罵ったりするギャグが面白い。

さらには横流しのイギリス人の核爆弾を持たせることをどこか軽いことのように扱ってるところや、ゴリラの夫婦愛のところなど、筒井康隆の落語的な面白さも光る、ピカイチの話だった。