オイラ的充実読書ログ。

人生を充実させるために、本を読みます。

筒井康隆の小説感想8冊目 『アルファルファ作戦』

アルファルファ作戦』

もうほとんどの人が地球に住んでいない時代、そこに残るいまより長寿になった高齢者が、侵略してきた異星人と対決する。

この話は、寂しさと和やかさが入り混じっている。

侵略する異星人もどこかでつまはじかれた高齢者たちで、相通ずると思った地球の高齢者たちに最後は優しさでもってやられ役を演じて立ち去っていく。

個人的には、主人公とファンファンの緩急差によるドタバタパートに笑った。

 文体でのミスリードによるオチも、素晴らしい。

 

 

『近所迷惑』

 開閉できるものの先の空間があべこべになっている話。

主人公は銀座に行ったりアメリカに行ったりとあちらこちらに回される。

大統領の部屋でワニと大統領夫人が左に右に行ったり来たりするくだりが面白い。

解説には、「明日の保証もないまことにもろい日常性の上にいるにもかかわらず、その現実に絶大な信頼を寄せている」と書かれているが、まさにそうだ。

簡単な話、明日異星人が伊勢聖人としてやってこないとも限らない。

 

『慶安大変記』

 

予備校生と大学生の戦争。タイトルは慶安太平記とかかっている。安保闘争の様相もオーバーにパロディにされている。

主人公の過剰ないたずら心で、戦争状態になるが、精神状態が極端で人間味からかけはなれていってしまっている。だからこそのドタバタではあるけど。

話の入りの主人公が大学受験を控えてるところに「さあこっちへいらっしゃいと手招きせんばかりにでかい予備校ができて」という文章が、つかみはオッケー感が強くて楽しい。

 

『人口九千九百億』

遠い未来、火星に人が住み、何百年ぶりかに地球と交流を復活させようとすると、その生活習慣がものすごいミニマムになっていたという話。

途中で出てくるサディスティックな女性が強いアクセントになっていて急に熱度が高い。

 

 

「公共伏魔殿」

公共放送なんて見る価値がない、と支払いを断っていた男が、ひょんなことからその放送局の中の恐ろしいものをたくさん見てしまう話。最後には支払いに応じる。

強権を持った公共放送が過剰に描かれている。実際でも、かなり金を吸い取るシステムが確立しているので、美味しい思いもしているのであろう。

主人公が使い捨てられたタレントたちに追い回されてスタジオに入ったところのドタバタが少しグロテスク気味だが、笑える。

 

『旅』

時間管制局に所属していた4人が、罪を犯した罰に、精神だけ昔話の世界のようなところに行かされる話。

少し重いステップで話は進んでいく。昔話の世界で一度皆殺されてしまうのだが、その影響で4人の精神世界が混じり合い、意識の中で入れ代わり立ち代わりに妬んだり、愛し合ったり、殺そうとしたりするところが素晴らしい。一人ではあるけど、自分の頭似たような混乱を来たすことがあり、それを文章にするのはすごいな、と。

 

『一万二千粒の錠剤』

老衰を防ぐ薬をもらい、自分の家族から近所のばあさんまで、町内中に追っかけられる話。みんながみんな、目の色変えてその錠剤を欲しがり、殺し合いに発展する。

女の武器を使って体を許す女が、ガラリと態度を変えて薬をひったくっていく様が、様式美的に面白い。

 

 

『懲戒の部屋』

痴漢の冤罪をなすりつけられた男が、徹底的に女たちにいじめ抜かれる話。とにかく、主人公の男をヒステリックに攻め立てる。

実際、人が人をいじめるのには男も女もない。もっと心の奥深いところにある闇が男女関係なく強烈なマウンティングをするものだ。

 

色眼鏡の狂詩曲

17歳のアメリカ人から送られてきた日本を描いた小説を、筒井の友人の江藤が翻訳して、読む話。

他国からみた自国と、自国からみた他国の話だか、置き換えると他人から見た自分と、自分から見た他人のようで、本当にお互いを知るには、上辺だけの付き合いじゃだめなのかな、と思った。